susieの旅ブログ

埼玉在住都内に勤める40代主婦の旅と本の記録。

「矛盾社会序説」「コンビニ人間」を読んで


イメージ 1

矛盾社会序説 その『自由』が世界を縛る」御田寺圭

かかわりあう誰かを自由に選べることは、選ばれることのない誰かが存在することの裏表であり、耳ざわりの良い建前の背後で、疎外された人びとの鬱屈がこの社会を覆っている。
「社会が自由を謳歌するためには不自由をこうむる人柱が必要不可欠である」という、現代社会の「矛盾」に切り込み、語られることのなかった問題を照らし出す。
「かわいそうランキング」下位であるということは、ほとんどの人からかわいそうと思ってもらえないどころか、その存在を認知すらされず「透明化される」ことを含意する。
場合によっては、「自己責任だ」「自業自得だ」と石を投げられることすらあるかもしれない。
そうした人びとの、誰の目にも触れることのなかった小さな祈りを、本書の19編にまとめたつもりである。

なんとなく目について立ち読みしただけのこの本にはわたしの興味あることがたくさん書いてあって、とりあえず購入して近くのスタバですぐに読みました。昨年出逢った本「うつの心理と性格 その深奥に眠る静かな力と日本文化」を読んでからというものの矛盾を無視できなくなってきてしまい社会での矛盾の多さに頭を抱えていましたが、著者はそれをとても難しい言葉を丁寧に使いながら正しく表現されていて、読み終えた後は感動すらありました。
「はじめに」にも書かれている問題ですが、世間は愛玩動物の保護や絶滅危惧種を守るのは必死です。そういう活動を目にした時わたしがいつも思っていたのが「ホームレスはいいの?」ということ。同じ人間同士なのに浮浪者はちっとも守られない。ちょっと怪しい人、キモい人、異端者に於いては死んでくれと言わんばかりの勢いで排除する人びと・・・すごい矛盾していると常々感じていました。また無意識に潜んでいるこの世の「かわいそうランキング」。そういうものは容易く順位をつけられるものではないと思う。人によって立場によって可哀想な度合いは違って感じるものだし、度合いだけで助けるか助けないかを決めるものではない。
これもよく思っていたけど、昔から多数決って大嫌いです。少数派だと絶対に守られることのない謎のシステム。あまり根に持たないわたしだけどちょっと根に持っているのが数年前のマンションの駐車場値上げ問題。97%の住民が敷地内駐車場を借りているので管理費を値上げすることになったのです。つまり残りの3%の人間は借りてもいないのに駐車場代3千円を負担することに。別に駐車場代を上げればいいだけじゃないの?ってすごい思ってたんだけど多数決だったため否決。こういうことがあってから、理事会も住民もバカだから行っても意味ないと総会に出なくなりました。もし理事会に、職場に、この著者がいたらわたしはきっとものすごく救われていたんだろうなあ。
多くの人に読んでほしい名著です。



イメージ 2


「普通」とは何か?
現在の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。
36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれるーーー。
「いらっしゃいませー‼」お客様が立てる音い負けじと、今日も声を張り上げる。
ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが・・・・・・。

ここ数年ほとんど小説を読まなくなっていたけど、ふと本屋で目についてあらすじ読んだら面白そうだったし薄かったから買ってみた一冊。昨夜買って途中まで読んで、面白くて今日の早朝から続き読んだほど面白かった。芥川賞受賞してたのは知っていたもののタイトル的に興味を惹かれないという理由で読まなかったのはもったいなかったと思う。
読み終えて気になったのはこれを読んだ人のレビュー。意外にも大半が面白く読んでいたみたいで、そんなに多くないもののやっぱり「理解できない」という人もいた。それもそのはず、この主人公は「普通」じゃない。でもわたしはすっごい共感してしまうところがありました。誰かの真似して喋る感じ、ああ分かる分かると。3年前くらいからか、わたしは”最近出逢った人”と話しているときに笑い合ったりすると鳥肌が立つようになってしまったのです。最初、自分は楽しいはずなのになぜ鳥肌が立つのだろうと原因がわからなかったのですが、これを読んで確信しました。わたし、偽ってんだ、と。全然面白くないのに「今わたしが笑ったらあなた楽しいでしょ?」と笑って見せていたんだと。だから多分他人からは割と「普通」の人だと思われていると思う。けれどこの物語のように”なんとなく異質”と無意識に感じられているとも同時に思っている。この感じを誰かに話したくてもどうやって伝えたら良いのかわからず、というか伝えたら困らせるのではないかとか思っていて、いつか本に書こうとか考えたりもしたけど、この人が見事に描き切ってくれたのでもうわたしが書く必要は無くなったらしい。
「矛盾社会序説」に通ずる部分も多く、これまた矛盾を敏感に感じ取る主人公の本でとても読み応えがある一冊。